My lovely person
02
「キャプテン!こっちこっち!」
手塚が2人のもとへ行くと1人の子供が横たわっていた。
「・・・・・・・」
「どうする?キャプテン?」
「今は気を失ってるだけだけど、ちゃんと生きてるにゃ。」
「他は全滅だけどね・・・」
「・・・・・・・」
すると、手塚は無言でその子供を抱え上げ仲間のもとへ向かって歩きだした。
突然のことに2人は驚き声をあげた。
「手塚っ!その子をどうするのさっ!」
「不二の言う通りにゃっ!何処につれていくんだよっ!」
「・・・船につれて帰る。こんな子供1人では生きていけないだろうからな。」
「へぇ。子供は足手まといになるから乗せないんじゃなかったの?」
「それに、少女を1人残すわけにもいかないしな。」
「えっ!その子女の子なの?!」
「やっぱりね。」
「不二知ってたの?!」
「なんとなくね。」
と、そこで他の仲間たちがいるところに着き、やはり驚かれたので、軽く説明をすると、
「「キャプテンの言うことなら!」」
と声をそろえて了解してくれた。
「では、皆船に戻り各自自分の持ち場に着くように!!」
そして、手塚の号令で全員船に戻った。
「大石、ちょっと来てくれ。」
船に帰って手塚が少女を自室に寝かしに行ってすぐ大石が呼ばれた。
「なんだい、手塚?」
「あの子供を診てやってくれないか?少し熱っぽい気がするんでな。」
「ああ、わかった。すぐ行くから少し待っててくれ。」
そう言うと大石は急いで自分の部屋に戻り、診るための道具を持ってきた。
大石の役職は副キャプテン兼医者なのである。
「お待たせ。行くか。」
「こっちだ。」
手塚は大石を連れて部屋に戻ると、そこには少し顔を赤くして寝ている少女がいた。
「手塚。英二から聞いたんだが、この子は本当に女の子なんだな?」
「ああ、間違いない。抱き上げた時の軽さと男にはない線の細さは少女のものだ。」
なぜ、大石がこのようなことを聞くのかというと、この子供の着ている服が上下とも男物で、しかも髪の短さも手伝っ
て、パッと見少年に見えたからだ。
「わかった。」
そして、大石は診察をはじめた。その間手塚は考え事をしていた・・・。
自分はなぜこの子供を連れて帰ってきたのか・・・なぜあのとき胸騒ぎがしたのか・・・なぜ自分はどうしてもこの子供
に会わなければいけないと思ったのか・・・
疑問は噴水のようにあとからあとからなぜ・・・なぜ・・・とあふれてくる。
その時、大石が診察が終ったのか手塚に話だした。手塚は内心驚きながらも、顔には出さずに大石の話を聞いた。
「ちょっと熱があるな。多分精神的なものだろう。目の前で村の人たちが皆殺しされたんだ、当たり前だ。」
「そうか、じゃあ不二と菊丸を呼んできてくれないか?診察が終ったら呼べとうるさくてな。」
手塚が溜息をつきながら言うと、大石は笑って、
「ははは。英二と不二はこの子のことを気にしてたからなぁ。わかった、呼んでくるよ。」
と言い、部屋から出て行った。しばらくすると、大石が菊丸と不二を連れて戻ってきた。
「手塚ー、あの子大丈夫?」
「少し熱があるが、今はまだ眠っている。」
「そっか。早く目がさめるといいね。」
「本当だな。」
「2人とも、しばらくここにいてくれないか?俺は仕事に戻る。」
「OK!まっかせてよ!」
「言われなくてもここにいるつもりだよ。」
「・・・そうか。大石はどうする?」
「俺は仕事があるから戻らせてもらうよ。」
「わかった。じゃあ、2人とも頼んだぞ。」
「「了解でっす!キャプテン!!」」
「行くか、大石。」
「ああ。2人とも騒ぐなよ!」
「わかってるよー。心配性だなぁ、大石はー。」
「大丈夫だよ、大石。僕が付いてるからね。」
「どーいう意味だよー。不二ー。」
「どういう意味もなにもそのままの意味だよ。」
「・・・頼むから2人とも静かにしてくれ;;」
そして、手塚と大石は不安になりながらも手塚の自室をあとにし、各自仕事に戻った。
船上はいつもの日常どうりにすごしていた。
しかし、その日常が数十分後の菊丸の声により壊された。

